Vol.3 点字紙のポチ袋から広がった世界

小さな出会いから、これまで知らなかった世界が見えてくる。そんな経験はありませんか?今回の出会いは点字のあまり紙で作られたポチ袋。その小さな扉を開けた途端、点字の世界が目の前に広がりました。
私たちらしい出会いのキッカケを作りたい
久留米市の広報紙「広報久留米」には点訳版と音訳版があります。その点訳版のあまり紙を使ってポチ袋を作り販売をする、とご近所に住む坂井恵子さんが話をしてくれました。
坂井さんは久留米市身体障害者福祉協会の女性部の代表でもあり、水引アーティストでもあります。さっそく作っているところを訪ねてみると、一つひとつ丁寧に作られたポチ袋に色とりどりの水引をあしらった可愛い作品が並んでいました。日本身体障害者福祉大会で点字の紙を使った作品を見かけたことから水引をあしらったポチ袋を思いつき、さらにはNPO法人クローバーさんより、「作業場が空いているので使いませんか」と声をかけてもらったことが、はじめる大きなキッカケになったそうです。「ずっと私たちらしい取り組みをしたいと思っていました。障がいのある私たちは、自分たちの範囲でみんな一生懸命に生きていて、常日頃から健常者の方とも友達になりたいと思っています。けれど、知り合う機会があまりないのも事実。この点字紙のポチ袋から、少しずつ知り合う機会につながったらいいなと思い作っています。それが一番の願いです。」と嬉しそうに話をしてくれました。

(久留米市身体障害者福祉協会の女性部の皆さん)
厚みから感じる点訳版に込めた思い
次に、久留米市広報戦略課に伺い、広報久留米の点訳版を見せてもらうことにしました。広報久留米の点訳版は昭和46年にスタート。現在は、パソコン点訳コミュニケーションの会「点コミの会」のボランティアメンバーが毎月点訳しています。発行された冊子は、広報戦略課から久留米市障害者福祉課、久留米市内の各総合支所、社会福祉協議会、久留米市立中央図書館に設置され、希望者には発送もしているそうです。通常は数ミリしかない「広報久留米」ですが、イベント欄まで細かく点訳しているため、点訳版になると3センチくらいの厚みになっていました。「点訳版を読んでくださった方に久留米市の動きやサービスが伝わることで、暮らしの安心感が高まればと思います。」と広報戦略課の上原敬子さんは話します。

視覚に関する交流拠点ー佐賀「あい さが」を訪ねてー
久留米市から車で約1時間。佐賀市に「佐賀県立視覚障害者情報・交流センター あい さが(旧佐賀県立点字図書館)」があると聞き、行ってみることにしました。
ここは視覚に関する交流拠点。相談支援、点字図書、録音図書(テープ、CD)の貸出・閲覧、広報誌の点訳・音訳、ボランティアの育成、見えない、見えづらくても使いやすい便利な道具の展示紹介もあります。白杖からお茶碗、電化製品、拡大読書器などもあり、高齢で見えづらくなってきた方の相談も受けているそうです。点字図書の蔵書数は7000冊。直接借りに来られる方もいるそうですが、電話で受け付けて郵送することが多いそう。
一番驚いたのは、点字図書の作成には点訳者1人につき1冊で1年ほどの時間を要するため、全国で1つの本(作品)ごとに1冊だけ点字図書が制作されるとのこと。サピエ図書館という視覚障害者や活字による読書が困難な方を対象としたインターネット図書館にすべての点字図書が登録されており、「あい さが」にはない本も取り寄せてお届けしていると教えてくれました。

小さなポチ袋が教えてくれたこと
点字のことをもっと勉強してみようと思い久留米市図書館を訪れました。
手にしたのは、絵本『6この点 点字を発明したルイ・ブライユのおはなし』。ルイ・ブライユの生い立ちや失明の経緯、その後の暮らし、そして点字を生み出すまでの苦労がやさしい絵とともに描かれていました。その壮絶な人生に胸を打たれると同時に、坂井恵子さんたちの点字のポチ袋に込められた願いと、この絵本との出会いが、私を点字の世界へと導いてくれたように感じました。また、普段どれほど自分が視覚に頼って生きているのか。そのことにも改めて気づかされました。
ポチ袋のような “小さな扉”は、きっと私たちのまわりにまだまだたくさんあると思います。その扉をそっと開けて、中をのぞいてみる。そんな一歩が、新しい世界につながるかもしれません。

(ピーター・ウィンクラー作/ナンシー・ルー・ロメオ絵/徳永康元訳/岩崎書店)
記事:池田彩/(一社)お母さん大学福岡支局
広報久留米 点字版のお問い合わせ先:
久留米市総合政策部広報戦略課 0942-30-9119
あい さが
0952-26-0153
ポチ袋についてのお問い合わせ先:
坂井恵子さん 090- 4515-5901
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