Vol.4 段ボールが紡ぐ、無限の想像力と小さな一歩。

久留米市荘島町にある地域の居場所「ぷらっと.荘島」。そのカウンターに置かれたある作品を一目見た瞬間、心を鷲掴みされたような感覚を覚えました。その作品は、誰もが知るお菓子のパッケージデザインを、段ボールを切ったり貼ったり、時には薄く剥がすことで驚くほど精巧に素材の質感や色を表現されていて、ただならぬオーラを放っていました。

創作のルーツは、病と向き合った時間

これらの作品を生み出したのは、久留米市在住の中学3年生の男の子。衝撃を受け「ぜひ、この男の子に会って話を聞きたい!」という衝動に駆られ、私たちは早速、作者である井上琉斗(りゅうと)くんに会いに行き、ご本人とお母さんにお話を伺うことができました。

ぷらっと.荘島のカウンターに展示してあった段ボールアート。
市の子ども子育てサポートセンターから紹介があったのが設置のきっかけ。

「琉斗は小さい頃は割り箸で銃を作るなどしていて、昔から手先がとても器用なんです。なんでも分解するのが大好きでしたし、気分が乗るとどこまでも没頭する集中力がありました」とお母さんは語ります。

琉斗くんが現在の創作活動に没頭するようになったきっかけは、体調を崩して2025年4月から入院をしていた3ヶ月間の間に始めたウッドパズルでした。

入院中に琉斗くんがはまったウッドパズルが部屋中に所狭しとならんでいる。
完成度が高く、実際に動いたり、使えたりするものも。

家の中を見回すと、ウッドパズルでできたメリーゴーランドや時計などが所狭しと飾られています。「琉斗の部屋はいつも木の香りでいっぱいなんです」とお母さんが言う通り、部屋はウッドパズルでぎっしり。このほとんどを入院中に作り上げたというから驚きです。複雑なものでも約6時間で組み立ててしまうほどの集中力で、次々と作品を生み出していきました。お母さんは「もう終わったの??早い!もう少し時間かけて作ってよー」と内心思っていたようです(笑)

退院後もまだ体調が優れずに、今に至っても家を出ることが困難です。そんな琉斗くんが次に熱中したのが「段ボールアート」。最初に作ったのは、彼の頭の中のイメージを形にした「茅葺き屋根の家」でした。段ボールのあらゆる部位を組み合わせ、屋根の質感や窓の表現が緻密に工夫されていました。最近作った炭酸飲料水のボトルは、展開図を想像しながら色や厚みの違う段ボールを選び、丸みや素材感を表現していました。

段ボールアートの話を終始笑顔で楽しそうに話をしてくれた琉斗くんとお母さんと愛犬ムギちゃん。

無限の想像力と「希望」

琉斗くんに段ボールアートの魅力を尋ねると、返ってきたのは非常にシンプルな答えでした。

「作っている時がとても楽しい」

次々とアイデアが降りてきて、一つ出来上がったら、次はこれ、と創作の過程そのものに夢中で、段ボールアートを始めてまだ3ヶ月という短期間にも関わらず、数々の楽しい作品が生まれています。「ものにもよりますが、大体1週間くらいで出来ます。難しい方が楽しいんです」と笑顔で話してくれた琉斗くん。数ある作品の中で一番難しかったのは「スニーカー」だそう。細部に渡るこだわりを感じられるその完成度もまた、観る人をワクワクさせます。

「将来の夢は建築家。」琉斗くんが語ってくれた言葉に強い意志を感じました。器用な手先、誰にも真似できない想像力で作り上げられる、琉斗くんの段ボールアートは、彼の将来の希望に向かう確かな礎を築いていると感じました。

ウッドパズルの梟時計と琉斗くん。将来の夢をはっきりと力強く語ってくれた。

作品が繋いだ、小さな「一歩」

取材の翌日、お母さまから喜びのメッセージをいただきました。

「あの日、取材のお祝いで外食に行きました。10ヶ月ぶりに琉斗と家族みんなで外食ができたんです!」

琉斗くんは終始笑顔で食事をしていたそう。「自分の段ボールアートを皆さんに見ていただいて自信がついてきたんだと思います」とお母さんは続けます。

取材に行かせていただいた私たちも、身体の中心が暖かくなるような嬉しい気持ちで胸がいっぱいになりました。琉斗くんの活動を、これからもずっと応援していきたいと強く感じた取材でした。

記事:髙橋米彦/Chietsuku project

写真:甲斐 裕二