Vol.7 地域の子たちから元気をもらえる

久留米市高良内町にある、レトロなタイル張りの外観が目を引く下園商店。ここは、商店として商いだけではなく、日常の暮らしの延長線上にある自然な思いやりや支え合いが、地域の居場所として見事に体現されているお店です。今回、下園商店の場としての魅力とその秘密を探るべくお話を伺いました。

下園商店の歴史は古く、創業から100年以上、現在の場所に移ってからも約80年が経ちます。初代の豆腐屋から始まり、現在は3代目のご夫婦の下園 雄策さんと下園 ゆかりさんがお店を切り盛りされています。鮮魚の販売や学校給食の事業を行いながら、約40年前にゆかりさんが この地域にいらっしゃったことを機に駄菓子の販売を始めました。今では、地域の子どもたちにとって欠かせない存在となっています。
ぽつりぽつりと。本音をこぼす。
放課後になると、握りしめた小銭を手に子どもたちが集まってきます。遠方からわざわざ自転車で来る子もいるほどです。しかし、どうやらここはただお菓子を買うだけの場所ではないようです。「親にも先生にも言えないことを、なぜかここでは相談してくれるんです」とゆかりさんは語ります。家庭での出来事や学校での友人関係の悩みなど、子どもたちは駄菓子を選びながら、ぽつりぽつりと本音をこぼすそうです。ご夫婦は特別アドバイスをするわけではなく、ただそっと話に耳を傾け、彼らに寄りそっています。

駄菓子屋で計算をおぼえた子どもたち
店先では世代を超えたドラマが日々生まれています。昔、小銭を握りしめて通っていた子どもたちが立派な大人になり、「おじちゃん、おばちゃん、元気しとるね〜?」と自分の子どもを連れて遊びに来るのです。「あんなに小さかった子たちが今では立派に親となって、子どもたちに計算の仕方や挨拶を教えている。そんな姿を見ると、目頭が熱くなります」と微笑むご夫婦。
地域の子から、もらえるもの
時には、お菓子を黙って持ってかえる子もいますが、頭ごなしに怒るのではなく、「よそでやったら大変なことになるよ」と愛情を持って対話します。心に傷を残さず、翌日もまた笑顔で来られるような関係性を築いているのです。ご夫婦にとって、彼らは血が繋がってなくても、大事な「地域の子」であり、「訪れる人々から私たちの方がいつも元気をもらっているんです」と素敵な笑顔で話します。

いつのまにか。そっと「し合う」。
今回私が下園商店の取材を通して感じたのは、「本当の居場所は作られるものではなく、日常の暮らしの動線上に自然と生まれ育まれるものだ」ということです。行政が主導して相談ができる「窓口」や「居場所」を意図的に設けても、必ずそこだけに人が集まるとは限りません。下園商店のように、買い物をしたり、何気ない会話を交わしたりする日々の暮らしの中にこそ、地域の誰もがホッとできる場所があり、それが結果として「◯◯し合う」に繋がっているのだと気付かされました。

制度や専門職だけが福祉を担っているのではなく、私たちの身近な日常の中に、何気ない福祉が潜んでいます。どこかで福祉は『ふだんの、くらしの、しあわせ』と聞いたことがあります。まさに下園商店のような温かな関係性を持った場所のことであり、そんな場所は、意外と私たちの普段の暮らしにも沢山あったりするのかもしれません。
記事:おきな まさひと/くるめ協働CASE PJ
下園商店 0942-43-8426

